映画『十九歳の地図』のこと

中上健次原作、柳町光男監督作品『十九歳の地図』は私にとって忘れられない映画だ。手元にDVDが無いから見たのは一度きりなのに。

それを見たのは私が二十歳の頃。夏の暑い日クーラーのない自室で汗をダラダラたらしながらテレビから流れているを見た。チャンネルはテレビ埼玉(現・テレ玉)。このテレビ埼玉は時々昔の映画、特撮、アニメを放送してくれる埼玉県の放送局。

映画の暗い内容、夏の鬱陶しい暑さ、そして合間に流れる脱力感あふれる間抜けなローカルCMが変に交じり合って記憶に刷り込まれた。そんなわけないんだけど自分しか見てないんじゃないかという特権意識のようなものもあった。

主人公は本間優二(『狂った果実』も最高!)演じる予備校生の新聞配達員。やり場のない怒り、やりきれない思いが画面を通してビンビン伝わってくる。そんな主人公と当時の自分を重ねた。『これは俺自身じゃないか。』と一人悶々とした思いをかみしめた。まぁ今思うとこの主人公より5000倍甘い大学生だったんですけど・・・。

本間優二は、その後役者を引退。その姿を見ることはない。